2008/04/21

貯蓄・投資・投機・賭博

マネーの価値を維持するためには運用しなければいけません。なぜなら経済活動が行われる以上、通常であれば物価は上がるものだからです。政策ミスによってデフレが長引いていた日本ですが、ようやく外的要因でインフレの圧力が見えるようになってきました(物価や税金は上がるが賃金や株価は上がらない、インフレの中でも最悪の類いに入るような状況ですが)。このような時、マネーの価値はインフレ率の分だけ目減りしていきます。では、貯蓄、投資、投機、賭博とあった場合、マネーをもっとも安全に運用できる選択肢はどれになるでしょうか?

貯蓄の場合、定期預金や普通預金はペイオフの対象になりますので1000万円まで保護されますが、それ以上の分については返還される保証はありませんから必ずしも安全とは言えません。利息が付かない決済用預金(当座預金の類い)はペイオフ対象外になりますから全額が保護されます。しかし利回りがゼロでは価値が目減りしていくのは明白です。定期預金や普通預金のような利回りがある預金であっても、銀行は手数料や金利差でたっぷり儲けますから、インフレ率を上回るようなことは決してありません。

投資の場合、一番安全なのは債権の長期保有です。しかし、これはあくまでも国債を指しています。外債では為替変動リスクがつきまとってしまいますので、ハイリスクハイリターンな金融商品とさほど変わらなくなってしまいます。外債は一見利回りが大きく魅力的に見えますが、手数料や為替変動リスクやデフォルト(債務不履行)を考えると割に合わない金融商品です。ゆえに国債なのですが、インフレ率より高いインカムゲイン(利息)を得られるかというと、単に持っているというだけでは難しいでしょう。金利の基礎とも言える政策金利はインフレを抑えるために上げられますので、どうしてもインフレ率を後追いする形になってしまうからです。余剰資金で長期に保有しなおかつ積み増し、アインシュタインをも唸らせた複利のマジックを活用することが肝心と言えます。(72÷金利=預けたお金が2倍になるまでに必要とする期間、という複利の法則もあります)

投機の場合、基本はキャピタルゲイン(差益)です。債権、不動産、商品先物、株、為替などのマーケットに短期で参入して売買を繰り返すわけですが、一部のものすごく稼いでいる人(こういう方は短期的にはいくらでも現れますし消えていきます)や「儲かります!」と銘打たれた商材(本当に儲かれば公開しません)などの情報群に誘惑されてしまい、賭博と変わらない様相を呈することは少なくありません。実際、相場の勉強と経験を地道に積み重ねていって、ようやく運用レベルの実力に到達するものなのです。また、それだけの時間を費やすのであれば、インフレ率云々というより、本業と言えるだけの収入を堅実に稼ぎだすプロフェッショナル(相場師や機関投資家に所属するディーラーのような)の領域に足を踏み入れることになります。時折、ものすごく稼いでいる人が現れてなおかつ消えない時もありますが、そういう方は天才肌であって誰もが真似をできる程度のレベルでは動いていないと弁えておくべきです。

賭博の場合、パチンコ、競馬、競輪、競艇、オートレース、麻雀、宝くじなど様々な種類がありますが、どれもマネーマネージメントがとても難しいためにマネーの運用には適していません。資金の限度額を決めればリスクコントロールができるかというとそうでもなく、周囲にはマネーに無頓着な人や病的に依存せざるをえないような人も多いので、それに引きずられるような形でドツボにはまってしまうケースが多々あります。あるいは投資や投機や賭博を同一視してしまう人も多いため、貯蓄以外は賭博であるというように四つある選択肢を二つに狭めてしまい、結果、ギャンブル性に溺れて浪費してしまうパターンもあります。また、最大の問題は寺銭(ショバ代)が高いという点です。競馬なら25%、宝くじなら50%にも上りますので、続ければ続けるほど資金が減っていくという構造が仕組まれています。

日本では貯蓄が一番安全な運用方法であるというコンセンサスが、特に疑われることもなく罷り通っています。銀行の外貨預金は暴利とも言える手数料を徴収しているにもかかわらず、目先の金利で人気を集めてしまうところがそれを物語っています。確かに高いコストを払って少ない安全を得ているかもしれませんが、マネーの価値が目減りしていくような方法では健全な資産運用とは言えません。特にこれがいいと推奨するつもりはありませんが、資産運用とまではいかないまでも経済活動に参加する方であれば、貯蓄、投資、投機、賭博の違いについて真剣に向き合うのは有意義なことです。そこには経済的な自由を獲得するヒントも隠されているかもしれません。もちろん、社会的地位が安定しているから無理に運用する必要はないという結論もあります。先入観に囚われすぎないことが肝心だと思います。